ガラクタのセレナーデ
「違うな。お前は夏目真なんかじゃない。
 思い出したぞ、お前……由羅の……」
 そう言って、箕浦は嘲笑を浮かべた。

 不意に箕浦から出た名に、思わず真は手の力を緩めた。
 その隙に、すかさず箕浦は真の手を振り解き、手にしていたパンをチロの口へと放り込んだ。

 アッという間に、チロはそれを飲み込んでしまった。
 もちろん、ろくに噛みもせずに……



「箕浦さん、こんなとこに居たんですか」
 言いながら、有坂が二人の元へとゆっくり歩を進める。

「箕浦さん、刑事さんが箕浦さんに会いたいって、
 さっきからずっと探してたんですよ」
 有坂の背後から、瑞希が不満げに口を挟んだ。

「刑事さんが、何の用ですか?」
 勝ち誇ったような笑みを浮かべ、箕浦は白々しく尋ねた。
「ちょっと、探し物をしてまして……」
 有坂は困ったように苦笑した。

「そうですか。で、その探し物は、見付かったんですか?」
 たっぷりと嫌味を込めた言葉を、箕浦は気持ち良さそうに吐き出した。


「ええ、見付かりました」


 有坂がそう言うと、たちまち箕浦の表情は凍りついた。



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