僕等の軌跡

「じゃあ行こうか?沢山先生。今日、僕この子送っていきますんで。」

中川先生が"行くよ"と外を指さしドアをあける。

「…最近は大丈夫ですか?」
「あんまり。家…まだややこしいですから。」

そうかぁ…と顔をしかめる先生。
でもね…と続ける。

「第3の選択肢だけは消すこと。分かった?」と。

分かってるよ…よくない事だって。
私…怖い。
でも他にどうしたらいいの?
いくら悩んでもいくら考えても、第4の選択肢が浮かばないの。
でも頑張るって決めたから…。

「じゃあ…家に帰りたくないです。」
「えぇ、また…気持ちは分かるけどさ。」
「先生は帰ってもらっていいです。私一人で大丈夫ですから。」

先生はちゃんと私を家まで送ってくれた。
だけどその後私が勝手に家をでた。
そうすればいい。

「だからさ、そういう問題じゃないの。分かる?まず俺個人としてほっとけない。」
「ほっといていいって私自身が言ってるんですよ?知らない事にしたら大丈夫です。」

いくら生徒に対する優しさっていったって、ここまではいらないよ…。
先生を巻き込むだなんてできません。
中川先生は黙り込んで腕を組み、俯いた。
先生…?

「さっきから帰っていいっと言ってるけど、僕は相原さんがいるからここにいるんです。言ってる意味分かるよな?こんな寒くて暗い中、女の子1人ほっとけない。」

ねぇ先生、どうしてそんなに優しいの?
私、帰っていいですって言ってるんだよ?
知らない事にくらいできるのに。
どうして沢山いる中の1人である、ただの生徒にここまで優しくできるの?

「…。もう…帰ります。」
「うん。そうだな。」

とは言ったものの…。

「え…。鍵…ない。」

インターホンを押したり、携帯から電話してみたけど、家族はもう寝てるみたいで…。

それもそのはず現在0時35分。

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