僕等の軌跡
「あの中川先生。私…大丈夫です。なんとかするんで、本当帰ってもらっていいです。」
なんとかできる気しないし、する気もしないけど…。
「うーん…。本当は駄目なんだけどなぁ。心配だしなぁ。」
中川先生が自分の携帯を取りだした。
「携帯の番号…教えるから。」
「え、でもそんな事っ…。」
もちろん塾の規則で、卒業後すら連絡先の交換は禁止されている。
もし交換してそれがばれたら…。
生徒はともかく先生は…。
「何かあったら電話して?」
「…はい。」
しばらく1人でボーっとして、またインターホン押したりして、最後電話してでなかったらもういいやっ…そう思った時。
「え…充電切れてる。…はぁ。」
あーあ、明日…いや今日か。
卒業式だよ。
まぁ帰りたくなかったしいいかな。
先生には帰れたって明日いえばいいか。
<ブロロロロロ…ッッ>
少し離れた所からこっちに向かってライトが照らされ、バイクのエンジン音がする。
「不良?暴走族?警察?」
まさかだった。バイクは私の前で止まった。
「何してんの!?やっぱ入れてないし…。携帯もかけないで」
中川先生…どうして。
どうして来ちゃったの?
さっき私が携帯見れた時でもう、1時10分だったよ?
「良かった来て。電話くるかと思って少し待ったけどないし。まぁ相原さんかけてきても、僕の為に嘘ついて家入れたって言ってただろうしな。」
「それで…いいじゃないですか。」
本当そうしてえけば良かったのにね。
「それは俺が嫌だ。分かる?相原さんが1人ここにいたままなら、相原さんは良くても僕が心痛めます。」
先生…ごめんなさい。
でも…ありがとう。