気まぐれ社長の犬
「お前、びびってるな?」
お祖父様に拾われて数カ月。
修行していた時に言われた言葉だった。
「そりゃまあ少しは。だって普通刀で襲われたり銃で撃たれたらびびるでしょ」
最初は接近戦用の武道ばっかりだったのが、最近では刀や銃を使ったものばかり。
今まで銃なんて握ったこともなかった私からすれば、撃つのも撃たれるのも怖い。
「そうか…死ぬのが怖いか」
「誰でもそうでしょ」
「わしは怖くない」
確かにお祖父様はいつ命を落とすか分からない仕事をしている。
でも死ぬのが怖くない人なんて、いる訳がないんだ。
「妃和、1番怖いことってのはな、大切な人に忘れられることだ。でもな、死ねば一生そいつの心の中に残る。忘れたくても忘れられねえんだ」
「確かに…」
「だから、死ぬのは怖くない。でも…やっぱり大切なやつとはずっと一緒にいたいよな。だから強くなれ…自分も大切なやつも守れなくて後悔することがないように、な」
お祖父様は珍しく私の頭をわしゃわしゃと撫でる。
「ちょっ、止めてよ!」
「はっはっはっ…お前ならそれができる。だから頑張りやがれ」
そう言って笑ったお祖父様。
この言葉を私はあの時、思い出したんだ。