気まぐれ社長の犬

「お前、びびってるな?」



お祖父様に拾われて数カ月。

修行していた時に言われた言葉だった。



「そりゃまあ少しは。だって普通刀で襲われたり銃で撃たれたらびびるでしょ」



最初は接近戦用の武道ばっかりだったのが、最近では刀や銃を使ったものばかり。

今まで銃なんて握ったこともなかった私からすれば、撃つのも撃たれるのも怖い。



「そうか…死ぬのが怖いか」


「誰でもそうでしょ」


「わしは怖くない」



確かにお祖父様はいつ命を落とすか分からない仕事をしている。

でも死ぬのが怖くない人なんて、いる訳がないんだ。



「妃和、1番怖いことってのはな、大切な人に忘れられることだ。でもな、死ねば一生そいつの心の中に残る。忘れたくても忘れられねえんだ」


「確かに…」


「だから、死ぬのは怖くない。でも…やっぱり大切なやつとはずっと一緒にいたいよな。だから強くなれ…自分も大切なやつも守れなくて後悔することがないように、な」



お祖父様は珍しく私の頭をわしゃわしゃと撫でる。



「ちょっ、止めてよ!」


「はっはっはっ…お前ならそれができる。だから頑張りやがれ」



そう言って笑ったお祖父様。

この言葉を私はあの時、思い出したんだ。



< 127 / 150 >

この作品をシェア

pagetop