気まぐれ社長の犬
だから私はあの時銃弾の前に飛び出した。
麗美さんを響城さんの中に残すなんて許せなかったし私なら死なない気がしたんだ。
まあ響城さんに心配をかけてしまったのは申し訳ないから二度としないだろうけど。
「ほら、こんな所にいないで早く帰りなよ。まだ言いたいことでもあるの?」
「いや…じゃあな」
一條はそう言って病室から出て行った。
「あいつ麗美のボディガードか?」
「そうですよ。あの時も一緒に誘拐されてたんです」
「随分仲良さそうだったけど?」
「殺そうとしてきたので殺しかけました」
鼻で笑って言うと響城さんの顔が崩れて顔を俯けた。
感情がころころ変わって面白い人。
「くそ、麗美か…ごめん」
「響城さんが謝ることじゃないですよ」
「でも、何でそんなやつと仲よくなってんだよ」
確かにその通りだ。
何で…か。何でだろう。
一瞬考えて、思いついたのは1つだった。
「ちょっと似てるからですかね」
「似てる?どこが」
「全てを捨ててその身の全てを主人の為に捧げる覚悟があるところ、です。まあ…一條の方が私よりそれが強いところがありますけど。私は一條のそういう可哀想なところがいじらしくて好きなんです」
「全てを捨ててその身の全てを主人に捧げる、ねえ…俺はそんなこと望んでないんだけどな」
悲しそうに笑う響城さんに少し胸が締め付けられた。
私が心配なんだろうな。