ワンダフルエラー
ん…、おかしいな。
ここの数字が合わない。数字を担当していたのが、会計の英二だということを思い出して自然と眉間に皺が寄ってしまう。
「ちょっと、にいさん」
書類に釘漬けだった俺を、牛革のソファに座って暇そうに足をブラブラさせているサラが呼ぶ。
「なんかわたしに自慢することないわけ」
「…なんだよ急に」
どきり、心臓が鳴る。昼間の告白のシーンが一気に甦るも、俺は平静を装って答えた。
「例えば、ミス誠東の女子に告られちゃいました!とかさ」
やっぱり。
「…さてはサラ、覗いてたろ」
「ちょっと。人聞きの悪いこと言わないでよ。たまたまよ、たまたま」
もの凄く楽しそうに言うサラ。俺は盛大に溜息を吐いて肩を落とす。サラはそんな俺を、不思議そうに見つめている。
「また、十夜に先越された」