夕闇の旋律

このさきも、永遠に傍に

ご先祖様の話だ。

私のご先祖様はアウィング症候群という死の病気にかかっていたらしい。

声帯に宿る魔法の存在に気付いたそのご先祖様は、その魔法に願ったという。

『魔法で世界に希望が満ちますように、私のような存在が、必ず救われますように』

ご先祖様は、その救いを『出会い』に定めた。

自分の、特に特別な子孫が、彼らと出会い、奇跡をおこしますように、と。

そうして世界中に散らばったご先祖様の子孫達の何人かは、彼らに出会って、救ってきたという。

私達の家族もその子孫なのだが、それを知ったのは曾祖母の時だという。

曾祖母はアウィング症候群の男の子と中学生のときに出会い、そして最後に信じられないような奇跡を起こした。

二人の歌は曾祖母に命を宿し、曾祖母が彼のために最後に歌った弔いの歌によってもう一つの不思議な命が生まれた。

曾祖母は私が生まれるかなり前に死んでしまっているけれど、卵から生まれた、奇跡みたいな存在の少女は私の隣にいる。

「琳歌(リンカ)、どうしたの？気分がよくない？」

中学生の姿のまま成長が止まってしまった、その少女の名前は寿々音(スズネ)。

私の母親は早死にしてしまったから、寿々音は私の母親みたいな存在だ。

たとえ自分より幼くみえても。

「ううん、大丈夫。それよりも、次の歌を教えてよ」

「本当に大丈夫？」

「大丈夫だって！心配性だなぁ」

大げさに肩をすくめて見せるとわかった、と寿々音はうなずいて歌い始めた。

寿々音は私に歌を教えてくれている。

寿々音の歌声は、曾祖母の歌声とうり二つらしい。
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