クリスマス・ハネムーン【ML】
 僕の言葉は、判らないはずなのに。

 身の危険は感じたらしい。

 僕に首を掴まれたままの、三人目の男が腕をめちゃくちゃに振りまわした。

 その。

 拳は大きくとも、大したことのない攻撃に。

 僕は男の腕をなんなくとると。

 昼間ジョナサンにやったみたいに、関節を反対側にねじりあげた。

 いや。

 ジョナサンの時より、少しばかり、手荒だったか。

 僕の手の中にあった男の腕は。

 鈍い音をたてて、あり得ない方向へ曲がる。

「お……折れたっ……!」

 僕からだいぶ遠くに離れたところにいる佐藤が、泣きそうな声で呟いたのが、聞こえた。

「僕が聞きたいのは、あんたの日本語じゃない……!」

 びびって腰の引けている、佐藤の態度が気にくわなかった。

 そもそも。

 こいつが黙っていたら、誰がハニーの居場所をつきとめるんだよっ!

 僕は、腕の折れた男を、ぽい、と捨てると、声の限りに叫んだ。



「霧谷さん!
 ハニー……っ!!」

 もし、ここに居るのなら。

 そして、無事なら。

 僕の声を聞いて。

 出て来て。

 もし、それが叶わないなら。

 せめて、声だけでも良いから。

 僕に、聞かせてよ!

 昔起きた。

 雪のクリスマスの時ように。

 愛しいひとの屍(しかばね)を、抱きしめたくなんてないから。



「ハニー……!」



 ……僕を一人にしないで。




 
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