クリスマス・ハネムーン【ML】
僕は、泣き叫びながら、ハニーの手がかりを。
いや。
僕の焦燥感を和らげてくれる獲物を探す。
この目に映るもの。
手に触れたモノを見境無く殴りつけ、傷つけてゆく。
その場にいた逃げ惑う人々の悲鳴は、聞こえても、別に気にならなかった。
少しずつ強くなってゆく血の臭いも、感じなかった。
ただ、僕は、喉が裂けるかと思うほど。
愛しいひとの名前を叫び続けていた。
僕は、まるで。
狂った獣のようだ……なんて。
頭の中の妙に覚めた部分が思っていたけれど。
ハニーの姿を求めて猛る自分を、自分自身で止めることなんてできなかった。
けれども。
「ハニー……!!!」
「そこまでだ。
……蛍(ケイ)」
僕の何度目か判らない。
獣の咆哮のような雄叫びを、日本語が止めた。
工場の螺旋階段、二階の踊り場から聞こえたその声は。
僕の事を『ホタル』でなく。
『ケイ』と呼ぶのは、ハニーじゃない。
僕の過去を知らない佐藤やジョナサンじゃない。
訝しく、うっそりと上げた僕の視線の先に見た人物、それは。
僕が昔、雪の王子と呼ばれていた頃。
看護師なんかじゃなく。
セレブを気取った金持ち女達を相手にするために。
暴力団で、飼われていた頃に。
僕の兄貴分を張り。
『店』の取締役をしていた岩井だったんだ。
いや。
僕の焦燥感を和らげてくれる獲物を探す。
この目に映るもの。
手に触れたモノを見境無く殴りつけ、傷つけてゆく。
その場にいた逃げ惑う人々の悲鳴は、聞こえても、別に気にならなかった。
少しずつ強くなってゆく血の臭いも、感じなかった。
ただ、僕は、喉が裂けるかと思うほど。
愛しいひとの名前を叫び続けていた。
僕は、まるで。
狂った獣のようだ……なんて。
頭の中の妙に覚めた部分が思っていたけれど。
ハニーの姿を求めて猛る自分を、自分自身で止めることなんてできなかった。
けれども。
「ハニー……!!!」
「そこまでだ。
……蛍(ケイ)」
僕の何度目か判らない。
獣の咆哮のような雄叫びを、日本語が止めた。
工場の螺旋階段、二階の踊り場から聞こえたその声は。
僕の事を『ホタル』でなく。
『ケイ』と呼ぶのは、ハニーじゃない。
僕の過去を知らない佐藤やジョナサンじゃない。
訝しく、うっそりと上げた僕の視線の先に見た人物、それは。
僕が昔、雪の王子と呼ばれていた頃。
看護師なんかじゃなく。
セレブを気取った金持ち女達を相手にするために。
暴力団で、飼われていた頃に。
僕の兄貴分を張り。
『店』の取締役をしていた岩井だったんだ。