クリスマス・ハネムーン【ML】
 それに、ハニーの世話を楽しげに焼いていたのをみれば。

 佐藤がハニーを好きなコトぐらい、誰にだってわかるはずだった……もし、佐藤が、女の子だとしたら。

 でも、佐藤は、僕と同じ男だったから。

 その思いは、こうやって、自分の口からはっきり伝えないと、誰にも判らない。

 それは、新しく知り合いになった僕は、もちろん。

 多分。

 思いを寄せる、ハニーにでさえも。

 誰にも省みられない心に。

 佐藤は、水滴で光り過ぎる瞳を、涙の形になる前に、ぐいっと拳で拭いた。

「こんなことになるなら。
 わたしも早く霧谷さんに思いを伝えておけば良かった……です……」

「Mr.佐藤……」

 切ない心を察して、しんみり呼ぶ、ジョナサンの声に佐藤は、泣きそうに笑った。

「こんなことをヒトに言うなんて。
 わたし、なんだか自分らしく無くてイヤですね」

 ああ。

 佐藤とは、出会ったばかりだけど、判る気がする。

 ハニーの側にいても、決して見劣りしない大人の佐藤は。

 いつも機嫌の良い顔をして、てきぱきと仕事をこなすのが、本来の姿なんだろう。

 だから。

 こんな風に、人前で泣きそうになるなんて。

 本来なら、ありえないはずだった。

 佐藤も、佐藤なりに……本気の恋を、してるんだ。

「佐藤さん……」

 かける言葉が見つからなくて、つぶやけば。

 佐藤は、僕に手を振った。

「頼みますから、螢さんは何も言わないでくださいね。
 わたし、かなり変ですから。
 螢さんからだと、今は何を聞いても怒鳴り散らしそうで……」

「……」

「わたしは、螢さんがうらやましくて……悔しいです」

 そう言って佐藤は、僕を軽く睨んだ。

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