カウントダウン
「……アンタそんなんで足りるの?食後のデザートも頼め」
「えっ、あ、ちょっ……あの」
強引さは相変わらず。
気が付けば祐介のペースになっていて、テーブルにはたくさんの料理。
「遠慮すんな」
「……祐介は私をどんだけ食いしん坊だと思ってるの?」
「バカ、俺が食うんだよ。アンタは食えるだけ食え」
なんてバカって言われても、さっきの不機嫌そうな顔と打って変わってニコニコしてるから文句も言えない。
「じゃあ、いただきます」
「……ああ」
ひょんな事から、昼と夜を一緒に過ごして、食べる姿を晒す相手は悠斗の友達で、2トップと言われてる男。
なんでお弁当を食べてくれたかも謎だし、こうして奢ってくれるのも不思議。
私がバイトしてる事知ってたんだよね?それとも偶然?
だけど、私が悠斗の彼女じゃなければこの偶然もなかったって事だよね。
いいのは見た目だけ。
なんて言われて、色んな噂が飛び交う祐介だけど、目の前で大きな口を開けて食べる姿を見ると、なんだかそんな噂も嘘みたく思える。
だって、無理に付き合っちゃったお弁当なのに、こうして律儀にお礼するなんて。
口は悪いけど、いい人。
私の印象は、噂話を聞く前とやっぱり変わらない。
「なんだよ、もしかして俺に見とれてる?」
「ちょっ、ばかっ違うよ。ただ、気持ちいいくらいの食べっぷりだなって思っただけ」
「ふ〜ん、まっいいけど。彩音もボケッとしてないで食え」
「うん、ありがとう」
思えば、久しぶりに一人じゃない夕食だった。