カウントダウン
「ヤってもいいけど、突っ込むだけだよ?好きでもねぇ女に好んで前戯なんてしねぇよ。突っ込んで出して終わり、それでもいいなら一回くらいは処理相手にしてやるよ」
瞬きさえも、忘れた。
金縛りにあったように全身が動かない。
そんな私を知らずに悠斗は笑いを堪えきれない様子で肩を揺らしている。
「祐介、お前も知り合いになったんだろ?スゲーよな、フツー言わねぇって。アレ真面目な女にも言うんだぜ?一回突っ込んで終わりでいいなら相手する、って。
まぁ、溜まり場でも祐介そんな感じだし?あながち冗談でもねーからウケる」
「溜まり場?」
「ああ、彩音に教えてなかったよな?世話になった先輩んトコなんだけど、あそこはなんだかんだ言ってヤリ目的の倉庫みたくなってっから彩音には教えてなかった。アブねぇからな。」
「……祐介も、行ってヤってるの?」
「まぁ、たまにだけど。体力は俺といい勝負?あ、因みに俺はヤッてねーから安心しろよ?」
……全部嘘だと、言って欲しかった。
悠斗はそこでヤッてるんだろうけど、祐介はそんな女の子を粗末に扱うような男じゃない。
そう、信じたかった。
でも
「アタシ、それでもいい♪突っ込むだけでもエッチした事には変わりないもん。悠斗と祐介、二人に相手して貰えたなんてサイコーに自慢出来る♪ね、早くシよ?」
腕に絡まる女の子を、どうか払って欲しい。
この前みたく鼻をホジってピンみたいでもいいし、罵ってもいい。
その後は私がちゃんと助けるから。
だからお願い、その手を振りほどいて……。
「……早く来いよ」
なのに、祐介は振り払う事も罵る事もしないで彼女の誘いに、乗った。
金縛りのように動かなかった体は、指先から自由になっていって、それに気付かない私は悠斗と食べる予定の自分のお弁当箱をゴトリという音を立てて落としていた。
「馬鹿、バレるだろ」
悠斗の言葉通り、私の存在を祐介に気付かれた。
そこには意地悪な笑顔でも真剣な表情でもなく、ただ驚いた表情を見せる祐介がこっちを見ていた。