カウントダウン



「悪りィ祐介。俺の女、マジ空気読めねぇから」


俺の女、この言葉がやけに強調されたように聞こえた。



「悠斗、わっ私……優衣に用事があったの!ごめん、やっぱり戻るね」


一秒でも早く離れたかった。落としたお弁当箱を拾って走り出したその後ろで


「あーあ、俺の彩音は純粋だから、少し刺激が強かったんじゃねーの?まあいいや、祐介、ごゆっくり〜」


なんて悠斗の声が聞こえた。

また“俺の”を強調して。









私はどうして走り出したんだろう。祐介は今フリーなんだから、何やってても問題ないじゃない。


むしろ私がそれを不快に思ったとしても、関係ない事なのに。



だけど、信じたかった。
祐介は、好きな人意外とはそんなコトしないって。


たとえ好きな人じゃなかったとしても、あんな風に存外に扱ったりしないって。



でも、一番ショックなのは


私のこと好きって言ったのに他の女の子とも関係を持つんだってこと。



結局私はまた、私だけを見てくれるような人を好きにならなかった。



そう、現実を突き付けられたような気がした。








「あれ?彩音、もう戻ってきたの?あ、祐介君なんだけどお弁当いらないって返されちゃった」


教室に戻ったら優衣が申し訳なさそうな顔で私に話した。


「そっか」


「そっか、って……それで?ちゃんと別れられた?」


「あ、言うの忘れた」


「忘れたって、何しに行ったのよ」


呆れ顔の優衣の隣りに座って大きなため息をつけば、トイレから戻ってきた友達が周りでお弁当を広げたからそこで会話をやめた。



「あれ?彩音ちゃん彼氏と一緒じゃないの?」


「あー、この子不幸を背負ってるから。悪いけど、彩音と私抜けるね」


気をつかってくれた優衣は、約束してたいつものメンバーから抜けて私を屋上まで連れ出してくれた。



本当に、大好き優衣。
いつもいつも優しくて、私はそれだけで幸せだよ。



「で、その辛そうな顔の原因はなに?」





< 94 / 149 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop