【短篇】こ い い ろ 。
 



静かで、人通りが少ない道をぽつぽつと歩く。
私の履いているローファーの音と、手に持つビニール袋の音しか聞こえない。家に着いて、キッチンでご飯を作るお母さんの疲れ果てたような背中に「ただいま」と呟いた。そのまま二階に上がり、部屋のドアを開けてベットにダイブする。
「なんで働いてないのに疲れてんの?」「そんなの家事してるからよ」と当たり前のような顔をされそうなので問い掛けようとは思わなかった。人は自分の感情を押し殺すことが得意じゃない生き物だと私は思う。当たり前、そうかそうだな。当たり前か。

じゃあ、わたしが竹本君に押し倒されるのも当たり前?

……って、なんでそこで竹本君が出てくるんだ。
いい加減にしろ私。少女漫画の読み過ぎだ。恋愛小説の読み過ぎだ。あんなのただの事故だ本当に。なぜ考える。何を考えている?……竹本君のこと。

はっと窓を見ると外は明るかった。見ると私は制服のまま。ブレザーは脱いでいたのでよかったが、シャツがくしゃくしゃになっている。ぽう、とする頭が急にさめて「ががが学校は」と思い手元にあった携帯を開くと、PM1:30と表示されていた。恐る恐るその隣を見ると、土曜日、と今日の曜日が表示されていた。よかった。今日は休日だった。



 
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