【短篇】こ い い ろ 。
 




『うん。藍川?』

びっくりした。びっくりして思わず弟の頭を叩いてしまった。
「いてっ」という弟の声が聞こえるが、そんなのおかまい無しだ。

「なんで、わたしのケー番、」
『森田に教えてもらった』

森田、と聞けば、ああ、雪乃か。と頭に浮かぶ。

「それで、何か用?」
『……あのさ』
「うん」
『今、コンビニにいるんだけど』
「……うん?」
『来る?』
「え、えっと……?」

なぜ、コンビニに?

『いや、ちょっと話があって』
「ごめん、いまからメアド教えるからメールで話できない?」
『あ、あぁいいけど』
「じゃあ、言うね。×××@××.ne.jp」
『じゃあ、今からメールします』
「はい、宜しくお願いします」

プツリ、という音が耳に入った時、わたしはわたしを睨みたくなった。叩きたくなった。
なぜ行かなかった。だって、コンビニで用があるなんて、なんで。
よくわからなかった。でも今はなんとなく会いたくなかった。
「何、男?」と弟ににやりと笑われ、「うるさい」とだけ言って、私は自分の部屋へ戻った。



 
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