カモミール・ロマンス
「ユキ、はい」
いつの間にか現れた執事姿の直也が何かを勇気に手渡す。
「何これ……ってチョコバナナ?」
その白いタッパーにはチョコバナナが二本入っていた。
「奢りだから、2人で美味しく食べてきなさい」
直也はそう言って胸の前でピースサインをしてみせた。
勇気は直也の優しさに胸が温かくなるのを感じていた。
「ありがとうナオ。翔も、オレ頑張ってくる!」
勇気は握りこぶしを作って、2人にアピールすると、屋台から消えていった。
直也はさっきまで勇気が座っていた椅子に座る。
「放送部の喫茶店お疲れ様。執事姿似合ってるよ」
「ふぁ、疲れた。オレには接客なんて向いてないのに……」
とかなんとか言いながらイケメンを揃えた放送部(活動はほとんどと言って良いほどしていない)の売り上げは、今回の文化祭で最高の売り上げとなった。
「さて、あっちは上手くいくのかな?」
「さぁね……」
翔と直也は勇気が消えていった校舎脇の道を見つめる。
「…………さて。
じゃあ僕もサッカー部の大喜利大会に行ってこようかな。ちょっと不安だけど」
そう肩をすくめる翔。
直也は小さく言う。
「翔は普段通りにしてれば笑いとれるよ」
「…………。
……どういう意味かな?」