カモミール・ロマンス
そこにあったのは漫画の様に線が細くて、親しみやすいのにどことなく独創的な絵画の数々だった。
「……宇宙みたい」
何が、と聞かれたら巧くは答えられない。
でも、その独特な色合いがそう思わせるのか、見た瞬間にイメージしたものはそれだった。
「宇宙かぁ、分かるなぁそのイメージ。
私も最初に見たのは調度『銀河』っていう作品で、ありきたりだけどそう思ったよ」
沙織が指差した作品。
たった3色で表されたそれは、見ているだけで吸い込まれる様だった。
勇気はその作品に見入ってしまう。
「ユキくんも気に入ってくれた?
パンフレットでもそれだけ人を引き付けるんだもん、本物を見たらもっと驚くよ」
勇気より少し前で後ろ向きに勇気を見ながら、沙織はそう微笑んだ。
美術なんて万年成績は1か2だった。
興味も無かったから悔しさもなかった。
勇気は初めて美術館というものを待ち遠しく思うのだった。
「やば……すっげぇ楽しみ」