カモミール・ロマンス


受付を済ませた沙織が展示開場へと向かう。

その開かれた扉の側で勇気を手招きした。

勇気は早足で沙織の元へと向かう。

開かれた先はやはり白い空間。

しかし、今度はさっきとは少しだけ違っていた。

その白の中で、大小さまざまな絵画が並ぶ。

色彩は不自然なくらいに豊かで、小さく流れる聞いたこともないクラシック音楽も不思議と邪魔にならない。

「ふふ。

入って良いんだよ?」

何かに飲み込まれた勇気。

展示開場の敷居をまたげずにいて、沙織が笑ってそう促した。

ゆっくりと歩を進める。

瞳を奪われるというのはきっとこういうことを言うのだろう。

溢れだしそうなくらいの作者の世界が、様々な手法を持って表現されている。

怖いくらいの感動に勇気は足早に突き当たりまでいってしまう。

「これ……」






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