唇にキスを、首筋に口づけを



私はムズムズした感覚に絶えながら、成り行きで歩き進めた。



そして、




カランコローン・・・、




いつもよく聞くこの可愛らしい音色。




うわ、本当に来ちゃったよ。



「いらっしゃいま・・・あ」



接客担当の高校生の女の子。



いらっしゃいませ、と全て言えていない。



私は爽哉の後ろに隠れるように立つ。



少し顔を上げれば、全てを理解したように笑顔を見せた。




「2名様ですね?」



「はい。」



爽哉が着々と返答していく。



「こちらへどうぞ」



私達はそう促されて席に座った。



去り際にめちゃめちゃいい笑顔されたけど。



うわあ、何だよ、何だよその笑み!




気まずい・・・。



これ後から何か言われるパターンだ。




今頃裏でキャハキャハ皆に報告してるんでしょー・・・?



ああ、もう。






「んー、どれが美味い?」



爽哉は早速メニューを広げている。



私はこんなに変なザワザワした気持ちでいるっていうのに。



「えー、


全部。」



「いや、特定して。」



そう言われ、

私もえー、なんて言いながらメニューを覗き込む。




「私が好きなのはー・・・、



オムライスかなぁ?



あ、ナポリタンもかなり好き。


肉汁いける気分だったらハンバーグとかも超おいしーよ。」




私は指を指しながら発言していく。



「そうかぁ、



さすがにこの暑さでこってり肉汁はパス。



ナポリタンにしようかな。」



「んじゃ私オムライスー」



すると爽哉は呼び鈴を鳴らした。



・・・次は誰が偵察しにくるのかなー・・・。




ああ、もう自分で厨房行って頼みたいくらいだ。




すると私と同い年の接客担当の男子が来た。




う、うわあ、


笑そうなの堪えてんのバレてるからね?



バレバレだぞ、おい。




「お飲物は?」



「アイスミルクティーとコーラで。」



「かしこまりました。」



男子は最後に一礼して私達を後にした。




私がバイト先の皆からの目線に気を向けている間に勝手に爽哉が注文していた。




にしても、



「よくミルクティーってわかったね。」



私、飲みたいとか言ってなかったのに。



「まあ生まれるときから一緒にいればなんとなくお前の考えてることもわかるよ」



「まじか、私限定の心理学者じゃん。」



すると爽哉はクスリと笑った。



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