執事と共にバレンタインを。
恵理夜は、春樹の手当てに使った絆創膏の包み紙で、折り紙を始めた。

――恵理夜の、考え事をするときの癖が始まったのだ。


「カトウという男の言動は、ひどく大雑把なものでしたね」


恵理夜は、小さな紙を器用に折り進めながら答えた。


「確かに、隅のチョコレートなんか取りはしないわ」


あの時のカトウはひどく興奮していた。

その興奮した手つきのまま、取ったチョコレートは――


「真ん中のチョコレートよ」
< 120 / 161 >

この作品をシェア

pagetop