風見鶏は一体何を見つめるか

――どうしたの?

そう聞いても母さんは「目にゴミが入っちゃ
っただけよ。心配してくれてありがとうね」

と微笑みを浮かべたまま、僕に早く寝るよう
急かすだけだった。

 高校に入学しある程度まともに働ける権利
を手に入れると、
僕は部活動などよりもずっと前に、
自分のアルバイト先を探すことにした。

親父には「別に金に困っているわけではない
だろう」と反対された。
でも僕は「欲しいモノがある」

という理由の一点張りで譲らなかった。

幸い、僕の通う高校は届けさえ出せば、アル
バイトは許可されるので、僕の、アルバイト
を出来る出来ないは親父にかかっていた。

 結局、珍しく頑固だった僕に、親父の方が
根負けし、了承を得た。

そうして、決まったバイト先が

居酒屋『のんだくれ』だ。
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