君に嘘を捧げよう

夢を見た。

周りは真っ暗で、自分の手さえ見えない。

俺はあても無くその空間を彷徨った。

いつまでも出口の見えない恐怖。

その恐怖が俺の中に芽生えたとき。

「こっちだよ…?」

よく聞き覚えのあるあの声。

一点だけ明かりの見えるそこに。

泣いている彼女が居たんだ。



「!」

俺は飛び起きた。

「何、今の…」

彼女がいた、その夢。

「アヤネが…」

泣いてた。

なんで?

時計を見るともう昼。

「やば、寝すぎた…」

リビングに行くと、一枚の紙がテーブルの上に置いてあった。

『いつまでもタクトが起きないからみんなで出かけました。テキトーにご飯食べなさい。タクトのバカ野郎』

「バカ野郎って…」

多分母さんかな。


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