澤木さんのこと。

テレビから澤木さんの方に視線を向けると、
今まで見たことのないくらい真剣な表情で見つめている。


「ったく。やっと認めたのかよ」

ぼそっと、一人ごとで言ったつもりなんだろうけど

あたしの耳にはしっかり入ってきて。

「澤木さん?」

あたしの呼びかけにも答えることはなかった。




どうしたんだろう、澤木さん。

電気屋さんを過ぎてから一言もしゃべらない。

みんなが声をかけてくれるのに

返事すらしない。


「澤木さん?」


あたしの声ももちろん届かない。

商店街を抜けて小さな公園が右側に見えてくると。


「わんわん」

どこからか、鳴き響く、寂しい声。

「なんだろう?」

不思議に思ってその声をたどってみる。

一度澤木さんの方を見たけれどさっきと変わらず何かぼーとしたような顔で
何か考えてる。

口元に指先を置くのは澤木さんが何か考えてる証拠。

仕方ない。

「あたし、ちょっと探してきますから!」

返事はなかったけど、それだけ伝えて犬の方に走り出した。

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