School

「ごめん…一人にしてって言われたのに盗み聞くような真似して…」

「ううん…私こそごめん」

「許さないでおく」

そんな事言いながらも、ぎゅうと抱きしめてくれた。

人はこんなに暖かい。

「ありがとう、楓」

ありがとうなんていつ以来言ったかな…。

「みっきー、かわいかった」

「え…何が?」

「微笑っていうのかな…優しい眼だった」

「微笑って…」

いつもどんな眼してるんだろう…。

「美月にだって人の血が通ってるから、笑うぐらいできるよ。」

嫌でも、あの父親と母親の血が私の中に流れている。

親は選ぶ事ができない。


「いつもはね、こんな顔してる」

指で眼を吊り上げてみたり、眉間にシワ寄せたり。

「………」

返す言葉が見つからない。

本当なんだろうなと思う。

「でもね、昨日よりも…柔らかい表情してる。
だから、日に日に良くなる。底辺なら上るだけ…ね?」

「最後がなければなぁ…最高だったかも」

「最後重要」

こんな他愛もない話。

楽しいなんて知らなかった。
< 26 / 40 >

この作品をシェア

pagetop