School
私たちは理科実験室に向かった。

実験室の奥にある先生たちの控え室に足を踏み入れる。

「ここは初めて入る」

楓はワクワクしていた。

「ほとんど俺しか使ってない」

「他の先生は?」

「常勤の先生は職員室に机があるし、
実験の準備は準備担当の先生の部屋がある」

「先生…一人なんだ」

「一人でも、ここの窓から全部見える」

本当だ。

校門も。校庭も。空も見える。

部屋を見回す。

実験道具はほとんどない。

机が3つとこの部屋には釣り合わないソファーだけ。
机の上もキレイに片付いてる。

「佐伯、携帯持って来てんだろ?」

学校に携帯は持ち込み禁止。

「…はい」

「赤外線で送ってやる」

白い携帯。

先生は白が好きなのかな…。

「佐伯の携帯ボロボロだな」

色が剥げたり、傷が入ってたりしている。

「代えたいんだけどね…」

クシャと先生が頭を撫でてくれた。

「没収されないうちに帰れ」

「はーい」

胸は不思議とと明るかった。
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