School

教科書もノートも筆記用具も何も持ってきてないのに。

あの先生は授業に出るように促した。

「藤田と西宮知らないか?」

誰かなんてわからない。

だけど、隣に座っていた「蘭」という子の姿は横にはない。

「全く…そんなに俺の授業嫌なのか」

「先生の授業めっちゃ好き」

「好きなら黙ってノートとれ」

キャーキャーと色めいている女子生徒をあっさりと生徒は静まり返らせた。

「ノートとペン…貸すよ」

「爽やか」という言葉がピッタリな男子生徒。

にっこり笑い差し出された。

ルーズリーフとシャープペン。

「あ、ありがとう」

変わらずに爽やか笑顔。

先生なんかより、陰ながら優しい人間を好きになりたい。

教室に来るのは今日だけだから。

名前なんて知る必要ないのに…

ルーズリーフの隅に竹田光と名前。

それから携帯のアドレスと番号。

「メールしてよ」

「するわけないじゃん」

目を合わせる事なく答えて私は仕方なく黒板を写した。

< 7 / 40 >

この作品をシェア

pagetop