School
教科書もノートも筆記用具も何も持ってきてないのに。
あの先生は授業に出るように促した。
「藤田と西宮知らないか?」
誰かなんてわからない。
だけど、隣に座っていた「蘭」という子の姿は横にはない。
「全く…そんなに俺の授業嫌なのか」
「先生の授業めっちゃ好き」
「好きなら黙ってノートとれ」
キャーキャーと色めいている女子生徒をあっさりと生徒は静まり返らせた。
「ノートとペン…貸すよ」
「爽やか」という言葉がピッタリな男子生徒。
にっこり笑い差し出された。
ルーズリーフとシャープペン。
「あ、ありがとう」
変わらずに爽やか笑顔。
先生なんかより、陰ながら優しい人間を好きになりたい。
教室に来るのは今日だけだから。
名前なんて知る必要ないのに…
ルーズリーフの隅に竹田光と名前。
それから携帯のアドレスと番号。
「メールしてよ」
「するわけないじゃん」
目を合わせる事なく答えて私は仕方なく黒板を写した。