Water World Wars ~軍人と少女の恋物語 【序】
「お帰りなさいませ。ジュリアン様」

 ジュリアンと呼ばれた男性は、ゆっくりと後部座席から降り立ち、つ、と顔を上げてまっすぐ開かれたエントランスに目を向ける。

 白い肌に美しいまでのプラチナブロンドの長いウェーブヘアーを後ろでひとつにまとめ、何かの強い意思を湛えたかのようなしっかりとした切れ長の瞳は、美しいまでのエメラルドグリーン。

 顔立ちも整っており、眉目秀麗で女性ならば必ず1度は振り返ってしまうほどの美貌を持っている。

 白地に金縁が施されたスタンドカラーの上着の後ろがスワローテイル型のタイトな軍服に、同じ白の軍帽に黒いとんび外套を身にまとっていた。

 軍帽の中央には、海王星の惑星記号が彫り込まれた金のプレートがしっかりと付いている。

 ポセイドンのトライデントを模した海王星の惑星記号は、そのまま海王政府のシンボルとなり、同時に海王政府軍のシンボルにもなっていた。

 かつかつかつ、と黒革のブーツを鳴らしながらエントランスに入っていく。

 そこには黒タイに黒ベスト姿の男性使用人が10名ほど左右に並び、ジュリアンが屋敷へ入るのを出迎えている。

「お帰りなさいませ、ジュリアン様」

「あぁ――ご苦労。みな、職務に戻って欲しい」

 一斉に頭を下げてジュリアンが迎えられると、それに眉根ひとつ変えず彼はいつもの言葉を告げ、マントを脱いで後ろから付き従ってきていた初老の男性に差し出した。
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