15歳のラビリンス
私が階段から落ちそうになった時は、一瞬だけジンは驚いたような顔をしていた。
だけどすぐにその表情を消して、ジンは何事もなかったかのように階段を降りていく。
すれ違う時ですら、私の姿が目に入っていないかのように。
「いつもお前は中途半端だよな」
ジンの背中に向かってサトルが言った。
その言葉にジンはピタッと立ち止まる。
「何も守れないくせにカッコだけつけてんじゃねーよ」
「ちょっと、サトル…」
サトルが私のために言ってるのか、里美のために言ってるのかはわからない。
一応、制止はしてみたけれど、サトルの顔は怒っていたからあまり効果はなさそうだった。
「あんたに何がわかる?何も知らねーくせに!」
サトルの言葉をスルーして行くかと思いきや、ジンは振り返ってサトルにつかみかかってきた。
ジンはサトルの胸倉をつかみ、にらみ上げる。
その表情は今まで一度も見た事がなく、私は思わずゾクッとしてしまった。