15歳のラビリンス
『…私は今のままがいい。大人になんかなりたくない…』
そういえば、そんな事言ってた。
あの時、ひどく暗い表情してて、何があったのか詳しく聞く事はできなかったけど。
「私も美織と同じで、ずっと親の言う事を忠実に聞いていい子でいたんだ。でも、私の進学の事で親の意見が別れちゃってさ。元々、あまり仲のいい両親じゃなかったから、爆発させないように頑張っていい子でいたんだけどね」
「ごめん、そんな事になってたの気づかなくて…」
「ううん。私は知られたくなかったから。うち、お父さんが見栄っ張りで、外ではいい顔してるの。だから、少しでも有名な進学校に行って欲しかったみたい。でも、私はそんなつもりなくて、お母さんも私の味方したから…」
どうしても親の言いなりにならなければいけないのなら、家を出るって言ってた彩乃。
あの時、そこまで追い詰められてたんだ。
でも、私は何もしてあげられなかった。
そんな彩乃を救ったのは貴昭だったんだね。