宿題するから利用して

しかし、寝込みを襲えば確実に泣かれるし丁寧に軽蔑されるから、そんな野蛮な真似ができない俺は、

白い少女の輪郭に伸ばしていた汚らしい手を瞬時に引っ込めた。

なぜなら、愛しい女に男として好かれていなかろうが、人として嫌われてしまっては何もかも終わりだからである。

一生、宿題を見せてくれと頼まれなくなるなんて死刑宣告に値するではないか。


高校生らしくクラスメートとは「きらい」とか「うざい」とか負のワードがギャグで通用する思春期特有の爽やかさが好きだ。

何でもネタになるE組の溌剌とした空気が心地良いのは、馬鹿馬鹿しい田上結衣がムードメーカーだからだ。


静寂に包まれた教室では、お姫様の寝息と時計の針の音が呑気に追いかけっこしている。

白い線が残っていない黒板の日付は既に明日で、俺たち高校生が過ごすここは未来を見ることしか許可されていないらしい。

< 61 / 229 >

この作品をシェア

pagetop