宿題するから利用して

毛先がくるんと踊る長い髪の毛に縁取られた人は世界で一番特別な存在。

「ゆい! わるい遅れたわ。ごめんやっしー、とか。あはは、お待たせ、無事ボードんデザイン決まったわ」


それは耳障りなノイズで、大人の愛を作る静かだったE組という洒落たホテルが、子供にぴったり賑やかな遊園地に変わった。

聞き慣れたローカルギャグを片手に現れたのは恐らく足音の持ち主で彼女の待ち人で、

タイミングを狙ったように現れるところに妙な絆を感じ、苛立ちが止まらなかった。


あと一秒、あと一秒早く決断したなら俺はお姫様の唇を奪えたのに。

同じベタならば、こんな風に中途半端な未遂で邪魔が入るご都合主義のシナリオよりも、

キスをしている瞬間を目撃されるお約束の方がいい。

どうせ報われないなら悪あがきくらいさせてくれたっていいじゃないか。

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