persona of fairytales
      ≠
――コン、コン、コン、コン
着替え終わった羅衣は、ためらいがちに四回扉をノックして開けた。
「何で、ノックする必要があるんだよ・・・」
食卓の椅子に腰掛け。
机にひじをついて、頬杖をするエリックは不機嫌そうだ。
「ええ・・・私も迷ったんですが、一応と思いまして」
困ったように笑い、羅衣はエリックの前の席に座った。
椅子の数は四つ。
他に、誰かいるのだろうか?

「それに、しても何故・・・・・・この服が入っていたのでしょうか?」
胸元に手をやり、ウサギの仮面を付けたままの彼を見つめた。
「オレは知らねぇよ。何か問題でもあんのか?」
「まぁ・・・問題があると言えばあるのかもしれませんが・・・・・・。ただ、エリック君はこういう趣味なのか、と思っただけです。」

微笑。

今、羅衣の来ているものとは、紺と白の夏用セーラー服で。
羅衣の通う学校の制服でもある。
「はあ?どーゆー趣味だよ…」
「いえ、ですからこのような特定の衣服に愛着を持ち、それを着たり着せたりして喜ぶ、少々マニアックな趣味かと・・・・・・」
「違えッ!言っとくがそれを用意したのはオレじゃねぇし、それにオレにそんな趣味はねぇよ!!」
ガタンと椅子から立ち上がり、激高したエリック。
しかし当の羅衣は落ち着いて。
「はは、では冗談はこのくらいに」
「冗談かよ!」
「先ほど、全ての質問は着替えの後とおっしゃっていましたよね?」
「無視・・・・・・ああ、まあな」
「では、全ての質問に嘘偽りなく答えていただけるのですか?」
穏やかな顔で問う。
ムスッとしたようにエリックは子を反らし、
「・・・質問による。許される限りオレは質問に答える。オレは嘘を付かないし、誰かを騙す様なことはしねぇ・・・・・・絶対にな」
低く、答えた。
その、ただの答えだけではない言葉を羅衣は変わらない笑顔で耳に入れる。
少しの、ずくり疼いた胸の痛みに気付かないふりをして。
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