五里霧中



その時だった。


『うっ……』


おじさんの低い呻き声が耳に届いたかと思うと、急に体が解放された。


何が起きたのか分からない。


急いでおじさんから離れると、頭上から何かが降ってきた。


『早くそれを着て。僕と一緒に帰ろう』


暖かい声だった。


つられて落ちてきたものを見ると、それは言葉通り新しい服。


それが目に入った瞬間、なぜだか涙が零れ落ちた。



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