五里霧中



今まで流した冷たい涙じゃない。


感じたことのない、暖かい涙。



彼は静かにアタシに近寄ると、小さな体をそっと抱きしめた。


大きな胸にすっぽりと収まったアタシは、とまることのない涙を流し続けた。


誰かはわからなかったけど、安全だってことだけはわかったから。


アタシは何かが決壊したことを感じながら嗚咽をあげ続けた……



透き通った目をしたその男の子はアタシを軽々と抱き上げ、


『キミの名前はクロ。クロにするよ』


そう、小さく呟いた。



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