五里霧中



「……まって」


小さな声が耳に届く。


ゆっくりと振り返ると、寝ぼけ眼のクロがまどろんだ視線で僕を捉えていた。


「どうし「まって」


僕の言葉を遮り、クロが手を伸ばす。


まるで何かを探し求めるかのように。


まるで何かを渇望するかのように。


不穏な空気を感じた僕は急いでクロの手を取り、その口元に耳を寄せた。


クロの言葉はぼそぼと呪詛のように紡がれる。



< 129 / 351 >

この作品をシェア

pagetop