五里霧中



自分でもどうしてそんなことに反応したのかわからない。


でも、確かに感じた。


私は自由なんかじゃない。


絶対にアイツの呪縛からは逃げられない。



今、私の目の前にはアイツの死体が転がっている。


それでもなお、心の中に宿る不安の種は消えない。



だからきっと私たちは……少なくとも私は逃げられない。


毎晩アイツの夢を見て、言いようのない苦しみにとらわれ続けるんだ。


それは私と兄が生を受けた瞬間から決まっていた。


私がアイツのもとに生まれた時点で、私の運命は決まっていた。



これからもずっと“自由”という“呪縛”に縛られていくのかと思うと、私の体は静かに震えた。



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