五里霧中



「さて、僕の話なんてどうでもいいよ。

あの人たちの死体が発見されたら、警察はすぐにここを嗅ぎつける。どうする?」


隣で兄が悔しそうに唇を噛みしめる。


どうやら答えはもう決まっているようだ。


「……帰りたい」


「ん?」


聞こえているだろうに、男は意地悪く聞き返してくる。


私は拳を握り、丹田に力を入れてぐっと男を睨み返した。



「帰る!あんたのところに行く!」


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