五里霧中



何も言わずに歩き続けている二人は、『歩く』というよりは『足を動かしている』言った方が適切なほど無機質で、まるで人形だ。


表情を失くした整った顔。


穢れを知らない子供みたいに透き通った瞳。


だけど、どこか異形の影を纏ったその容姿。


一人一人を見ればおかしなところはないのに、二人揃うと途端に歯車が合わなくなる。


本当は一緒にいないほうがいいのかもしれないと、思わなくもない。



でも、と僕は独りごちる。



彼等が一緒にいたいと願うのなら、それが正解に決まってる。


無理に引き離して決壊してしまったら元も子もない。


そもそも僕は精神科医でもなんでもないんだから、本人たちの好きなようにさせているのが一番なんだ。



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