月夜に舞う桜華
『いらないもの、捨ててんだ』
そこには、深いドラム缶に幾つもの本や雑貨などがほおりこまれていた。
『ちょ、これ桜姫のだろ!』
バラバラとドラム缶に投げ入れていく和の手をつかんで阻止する。
『離せよ』
『何してるんだよ!』
桜姫のものを勝手に処分したら鉄拳が飛んでくるのは知っているはずだのに。
そして、よくよく周りを見渡せば、がらりと皇蘭の風景が変わっているように思えた。
『何って、いらないもの捨ててる』
『なんで………つか、桜姫は!』
和がオカシイ。
まるで桜姫の存在を消そうとしているようだ。
俺は、和の手を止めながら携帯を取り出す。
かけるのは勿論桜姫の携帯に。
通話ボタンを押そうとしていた俺は、しかし和の衝撃的な言葉にその手を止めた。