月夜に舞う桜華
桜姫が死んだ?笑えない、笑えない!
『………離せよ』
和は、俺の腕を掴むと振り払った。
よろっと二三歩後ずさる。
『っ』
ギロリと睨めば、和は無表情に俺を見た。
『――――ついてこい』
和は、顎で指示をすると、出入口の方に向かう。
『…………』
俺は、ギュッと握り拳をしながらその後を追いかけた。
和が向かった先は、大木のある場所だった。
昨日の強い雨で華は殆ど散ってしまっているが、桜の花のようだ。
まるで桜姫のようで、不安を覚える。
その大木の近くに、盛り上がった箇所があった。
人一人入れそうな位の大きさで、気で作られた十字架が立てられており、粗末な墓のように見える。
『ここは?』
『…………桜姫は、昨日車に跳ねられた』
『!』