月夜に舞う桜華



ポッポッと肩に、鼻に水が落ちてくる。
だんだんと激しくなっていくそれに、俺はゆっくりと顔をあげた。


『…………桜姫』


十字架にそっと話しかける。


『桜姫………』


そっと手を伸そうとして、俺は目を見張る。


『………?』


視線は十字架の先、土が盛り上がっている所の一部。
目を凝らしてみると、その土の形は歪で、しかも固められてはおらず、柔らかいままで雨に打たれながら流れていっている。
これでは、意味がない。


『…………』


頭に雨が当たり、頭に上った血がゆっくりと引いていき思考がクリアになっていくのが分かる。


そうして思いつく。


『………桜姫は、本当に死んだのか?』


この目で見ていないのに、和が言った言葉を鵜呑みにしてもいいのだろうか。


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