王子様はルームメート~イケメン彼氏とドキドキ寮生活~

「はい。私は、女子寮のつもりで入りました」

「十年前までと俺は言ったが?」

 即答に、息をのむ。

 入学が決まったとき、あえて確かめることはしなかった。

 だって、誰が想像するというのか。

「このアザミ寮が、男女混合寮だなんて思ってもみませんでした!」

 綾菜の発した声は悲鳴に近かった。

 雫学園は十年前、いち早くジェンダーフリーの精神を取りいれ、男女混合寮を実現した。

 当初こそ、各方面から異論があったが、差別のない学校として今では地域から羨望される存在らしい。

「世の中には男女両方がいるのに、性別で隔離するのは不自然だ」

 またしてもばっさりと言いきられる。

 不自然でも乙女だけの空間は楽園。

 綾菜は女子寮の素晴らしさを説明しようとして、やめた。

 女子だけの生活がどれほど素敵かなど、しょせん男にわかるはずがない。

「でも、私……。男のひとは困るんです」

「慣れるんだな」

 最後の抵抗すら、一瞬で跳ね返された。

 このひと、意地悪だ。

「ホントに、苦手なんです」

「さっき聞いた」


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