王子様はルームメート~イケメン彼氏とドキドキ寮生活~

 ――お願い。話しかけないで。

 異性が近くにいるというだけなら、我慢はできる。

 しかし、関わりをもたれると、とたんに背筋が凍ってしまう。

 虫を観賞できても、触ると震えがくるという感覚に似ているのかもしれない。

「顔色が悪いな。気分が悪いのか?」

 もう何も言わないでと心の中で叫ぶ。

 このひとは、いいひとだ。

 死にそうなほどの混雑から、身体を張って守ってくれている。

 気持ち悪いと思うなんて失礼だ。

 必死に言いきかせても、異性に近づかれているという嫌悪感は消えてくれない。

< 6 / 191 >

この作品をシェア

pagetop