切ない純愛崩れ

「里緒菜こすいから店員さん呼びまくりでー、楽しかったよ」

今度は女の子の声。
高校生活で聞き慣れた友人のもの。

舌足らずに猫撫で声でゆっくり喋るのは、あまりに典型的なぶりっ子過ぎて今時ダサいが、

彼女の場合は生まれつきのシュガーボイスなので普通に羨ましい。

自分は低いとされる方だから、少し乙女心的に不満だけれど、

人間性が声だけではないと分かっているから別にコンプレックスには感じない。


「はは、」

曖昧に笑う好きな人は、彼が好きな人であり私の親友(自分で親友と言うのはご愛嬌)である結衣ではなく、

あえて何の感情もない私の方を見てくる。


ああ、彼の瞳に自分が映る度に切なくなるのは何故?

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