君を想うとⅢ~True love~


夕暮れに染まる代官山の街と
帰りを急ぐ、人の群れ。

しばらく歩くと、少し交通量の多い道路に出てきた。



しんちゃんとお父さんとお母さん。

夕暮れの街をゆっくり4人で並んで歩いていると、しんちゃんは

「ぼく、ボールもちたい。」

と言って、お父さんにせがみ出した。




「だめ。ココは車が多くて危ないから。」




そう言ってお父さんが言い聞かそうとしても

「やだ!!今欲しいんだもん!!」

しんちゃんはガンと言って引こうとしない。




言い張るしんちゃんに
言い聞かせるお父さん。




その争いが何分も続いた後


「じゃあ、次の横断歩道までなら持たせてもいいんじゃない?」


フフッと笑いながらお母さんがお父さんに提案する。




「いや、だけど……」

「大丈夫。しんの左手は私がちゃんと繋いでおくから。」




そう言って、お母さんがしんちゃんの左手をギュッと繋ぐ。
ソレを見たお父さんは、ハァとため息を吐きながらしんちゃんの右手にボールを持たせた。





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