君を想うとⅢ~True love~
「落とすなよ、しん。」
「だいじょーぶ!」
心配そうなお父さんとニコニコのしんちゃん。
次の横断歩道まではあと10歩くらい。
きっとほんの20秒程度だし、きっと大丈夫だ。
そう思って歩き出した、私たち4人。
ドキドキしながら歩いていたけれど…
結局のトコロは、何も起こらず。
私たちは無事に横断歩道へ着くことができた。
「ちぇー。もうついちゃった。」
「ほら。ボール渡せよ、しん。」
お父さんがしんちゃんに催促をすると
「やだっ!!」
しんちゃんはプリプリ怒りながら、ボールを自分の胸元にサッと隠した。
「しん!!」
お父さんが声を荒げると
「おねぇちゃんにわたすっ!!」
しんちゃんは負けじとお父さんを睨みつける。
2歳児とオトナの、男と男の意地の張り合い。
そのバチバチの火花に終止符を打ったのは
「あなた、いいじゃない。
高宮さんに渡したいって言ってるんだから、それくらい許してあげましょうよ。」
もちろん
お母さんの穏やかな一言だった。