君を想うとⅢ~True love~
「はー。お前がそういうならしょうがないな。
しん、高宮さんにボール渡してこい。」
そう言ってお父さんはしんちゃんの右手をはずす。
お母さんが左手を握りながら私のところへと誘導すると
「いいでしょ。ぼくのおきにいりのボールなんだよ?」
しんちゃんは嬉しそうにソレを見せる。
そして……
“いいね。しんちゃんのボール素敵だね。”
そう言おうとした時。
私のカバンの中の携帯がけたたましく鳴り始めた。
――えっ!?誰!?
驚いてカバンの中を漁ろうとすると
「あら!電話だわ。誰かしら……。」
しんちゃんのお母さんと私の着信音がまったく同じだったらしく、お母さんは思わずしんちゃんの手を離して私と同じように携帯を探し始めてしまった。
その瞬間。
その反動で
しんちゃんの手の中からこぼれだして
車道に向かってボールが転げ出てしまった。