涙飴
あたしには、何だか五十嵐が照れているようにも見えた。

「じゃ、帰るから。またなっ!」


荷物をまとめ終えた鳴海は帰っていった。

さっきはあんなに大口叩いていたけど、何だか凄く悪い事をしてしまった様な気がした。

すると突然、美津菜が立ち上がった。


「……あたしも、先帰っていいかな……?」


その瞳は、何かを決心した様な、真っ直ぐで迷いない瞳だった。


「う……うん」


美津菜はありがとう、と言うと、急いで机の上にある物を片付けた。

鳴海の事、追いかけるのだろう。


「じゃあ」


片付け終わった美津菜は、走って教室を出て行った。


教室には五十嵐とあたしの二人だけが残った。
このシュチュエーションは、一体何度目だろう。


「榎田間に合ったかな?」


時計を見ながら、五十嵐が独り言のように呟いた。
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