俺はお前だけの王子さま
空気を割るようなその声に
罵声を浴びせ続けた彼女たちも止まった。
脱衣場のみんなが
出口の方を見る。
出口の外から
姿が見えない声は静かに続く。
「とりあえず出てこいよ」
え……
と、困惑気味の彼女たち。
加奈子は私の手を引いて
出口に向かって歩き出した。
私は―…
声を聞いた瞬間
それが誰だかわかった。
カラカラカラ…
脱衣場の扉をあける。
「…大丈夫?」
俯く私の視線の先には
紺色の浴衣姿の足元。
ゆっくり顔をあげると
あの頃から変わらない
爽やかな彼が立っていた。
「徳井く…ん…」