俺はお前だけの王子さま

つながる想い

ザザ――…ン


水梨くんが去った後

波が打ち寄せる音だけが残った。



砂を踏む音がして

王子くんの足がわずかに動き
私の方に体が向けられた。


その足元に反応するように
私は顔をあげる。


私を見下ろす王子くんの視線は

少し気まずそうに
私から反らされていた。


「悪かったな…」


ぽつりと呟いた王子くん


「…え?」


「渡瀬を、怖がらせて。」


王子くんはちょっと困ったように首に手を回した。


「わりぃ…なんつーか…」


「………」



王子くん…

あの王子くんが、困ってる…


それがなんだか愛しかった。


私は首を左右にふった。


「怖いんじゃなくて悲しかっただけだよ…私こそ、泣いてごめん…ね?」


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